外国人留学生×自動車整備士という新しい人材戦略を詳しく解説
地方の自動車整備会社はどう生き残るのか?
日本の地方において、自動車は単なる移動手段ではありません。
通勤、通学、買い物、物流、介護、建設、製造業など、地域社会そのものを支える重要なインフラです。
ところが今、その自動車を支える「整備」の現場で、大きな構造変化が起きています。
新車販売だけを見れば、人口減少が続く地方では今後大幅な市場拡大を期待することは難しいでしょう。しかし、自動車がなくなるわけではありません。むしろ新車価格の上昇によって、一台の車を長く乗るという考え方が広がれば、中古車、車検、修理、メンテナンスの重要性は高まっていきます。
つまり、「車を売る市場」から「車を長く使うための市場」へと重心が移り始めているのです。
ところが、ここに大きな問題があります。
整備する人が足りません。
今回まとめた資料では、2026年上半期の自動車整備事業者の倒産・休廃業件数が295件と半期ベースで過去最多となり、「仕事はあるのに事業を継続できない」という非常に特徴的な状況が指摘されています。整備士の有効求人倍率についても約5.45倍という厳しい人手不足が示されています。
これは単なる採用難ではありません。
自動車整備業そのものの再設計が必要になっていると、私たちは考えています。
外国人が日本の自動車専門学校で学ぶという選択肢
そこで注目したいのが、日本の自動車整備専門学校で学ぶ外国人留学生です。
日本全国には、国土交通大臣が指定する一種養成施設が約230施設あります。整備専門学校、高等学校、職業能力開発校などが含まれ、二級自動車整備士養成課程は原則2年以上となっています。所定の課程を修了すると、自動車整備士技能検定の受験資格が与えられ、実技試験についても一定期間免除されます。
【2026年版】全国52校・外国人が学べる自動車整備専門学校一覧
外国人留学生から「自動車整備士」を育てる、新しい人材戦略 日本の自動車整備業界で、いま大きな課題になっているのが整備士不足です。 地方では公共交通機関だけでは生活が難しく、自動車は生活や仕事を支えるインフラでもあります。 […]
ここには大きな意味があります。
海外から日本に来て、日本語だけを学び、その後就職先を探すのではありません。
日本語に加えて、自動車構造、エンジン、電装、故障診断、安全管理、電子制御などを専門的に学び、国家資格取得を目指す。
つまり企業側から見れば、単なる「外国人労働者」の採用ではなく、日本国内で専門教育を受けた若い技術者を採用することができるわけです。
さらに二級自動車整備士は、自動車の一般的な整備を行う能力を示す国家資格です。現在の特定技能制度では、自動車整備分野の特定技能2号について「二級自動車整備士技能検定」が技能水準を示すルートの一つとなっています。
特定技能2号は、特定技能1号とは違い、一定の条件の下で在留期間の更新を重ねながら長期的に日本で働くことができる制度です。
だからこそ、専門学校教育と在留制度を一体として見る必要があります。
外国人整備人材は年間何人くらい生まれるのか
ここは非常に重要です。
現時点で、「日本の自動車整備専門学校を卒業し、二級整備士を取得した外国人が全国で年間何人いるか」という統一された最新統計は、国から明確な形では公表されていません。
しかし、流れは確実に変わっています。
文部科学省が公表した専門学校留学生に関する調査では、令和6年度の外国人留学生の1年生が約3万4,000人、そのうち「自動車・バイク・航空系」が9.2%を占め、分野別では上位になっています。単純計算すると3,000人規模になります。もちろん、この数字には二輪・航空分野も含まれ、全員が二級整備士になるわけではありませんので、「年間3,000人の外国人二級整備士が誕生する」という意味ではありません。
しかし、重要なのはここです。
外国人留学生にとって、自動車整備という分野が明確なキャリアの選択肢になり始めています。
今後、日本語学校→自動車専門学校→国家資格→国内整備会社への就職、というルートを設計できれば、年間数千人規模の若い外国人人材が自動車関連産業へ向かう可能性があると私たちは見ています。
生き残る整備会社と消えていく整備会社
これからの自動車整備業界では、会社の規模だけで勝負は決まりません。
大切なのは、「人」と「技術」と「設備」をどう組み合わせるかです。
現在の自動車は、以前のように機械だけを直せればよい時代ではなくなりました。
ADAS(先進運転支援システム)、センサー、カメラ、EV、HV、電子制御、OBD診断など、整備士に求められる能力は明らかに変化しています。2024年からOBD車検が本格導入され、故障診断機やエーミング設備などへの対応も重要になっています。資料でも、最新設備への投資とIT・電気知識を持つ若いエンジニアを確保できる企業と、そこに対応できない企業との格差が広がる可能性が示されています。
だから私は、地方の整備会社が生き残る方法を「外国人を採用すること」だけだとは考えていません。
必要なのは、
外国人人材 × 国家資格 × 電子制御技術 × DX × 地域顧客
という組み合わせです。
外国人の若者に専門学校で二級整備士を目指してもらう。企業は学生の段階から学校と関係を作り、インターンや会社見学、奨学金、資格取得支援を行う。そして卒業後は整備士として採用し、OBD、ADAS、HV・EVなど次世代整備技術を習得させる。
さらに将来的には工場長、サービスマネージャー、外国人後輩への教育担当者へ育成していく。
ここまで設計して初めて、「外国人材戦略」になります。
新車が売れない地方だからこそ、整備産業には可能性がある
人口が減少すれば、新車市場は厳しくなります。
しかし、人が生活している限り、地方から車が突然なくなることはありません。
むしろ、「買い替える」から「長く乗る」へ変化すれば、車検、修理、予防整備、中古車再生、板金塗装、電子診断などの重要性はさらに高まります。
問題は需要ではありません。
その需要を誰が受け止めるのか。
資料でも、今後の勝敗を分けるのは「人手」と「テクノロジー」への投資であると整理されています。
GRITMANは、外国人材を単なる不足人員の補充とは考えていません。
日本の専門学校、日本企業、外国人の若者、在留資格制度を一つにつなぎ、地域産業そのものを持続可能な形へ再設計する。
その一つのモデルが、これからの「外国人×自動車整備」だと考えています。
地方の整備会社に必要なのは、「求人を出して誰か来るのを待つこと」ではありません。
2年後、3年後に必要になる技術者を、今から学校と一緒に育てることです。
それが、これからの地方自動車産業を守る人材戦略になるのではないでしょうか。




