特定技能1号「5年で入れ替え」は本当に安い?10人を2号へ育てると採用・支援コストが1,160万円変わる試算

特定技能1号の外国人を採用した。

仕事も覚えた。

現場の日本人社員とも関係ができた。

機械を扱える。

後輩にも仕事を教えられるようになった。

そして、5年が近づく。

ここで企業は大きな分岐点を迎えます。

「また新しい外国人を採用するのか?」

それとも、

「今いる人材を特定技能2号へ育てるのか?」

特定技能1号は、在留できる期間が原則通算5年までです。

一方、特定技能2号は、更新を続けることができれば在留期間の通算上限がありません。さらに要件を満たせば配偶者・子の家族帯同も可能です。また、1号外国人に必要な法定の支援計画による支援の対象ではありません。

つまり2号は、外国人を「5年間働く人材」から、

長期的に会社の中核を担う人材

へ変える制度でもあります。

今回のCOST REVOLUTIONでは、この2つの経営モデルを比較します。


特定技能2号は、もう特殊な制度ではなくなりつつある

2026年6月末時点で、特定技能2号の在留外国人数は18,295人。

2025年12月末には7,955人だったため、半年間で在留者数は大幅に増えています。

工業製品製造業だけでも、2026年6月末時点で2,386人が特定技能2号として在留しています。

現在、特定技能2号の対象は11分野です。

ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業です。

ただし、工業製品製造業で2号の対象となる業務区分は、2026年6月1日時点で、

機械金属加工

電気電子機器組立て

金属表面処理

の3区分です。経済産業省は、2号受入れ可能な事業所産業分類も46分類として整理しています。

したがって、

「製造業だから全員2号へ行ける」

というわけではありません。

まず、自社の産業分類・業務区分・本人の実務経験を確認する必要があります。


製造業で2号になるには、何が必要なのか

工業製品製造業では、特定技能1号を5年働けば自動的に2号になるわけではありません。

2号は、1号より高い技能水準が求められます。

2026年度の制度では、代表的な試験ルートとして、

製造分野特定技能2号評価試験

+

ビジネス・キャリア検定等

+

日本国内の製造現場で3年以上の実務経験

が必要です。

製造分野特定技能2号評価試験は、2026年度の受験料が15,000円、技能検定1級程度を基準とした水準で、製造現場で3年以上の実務経験が必要とされています。

また、製造分野の2号ルートで用いられるビジネス・キャリア関係試験についても、2026年度の特定技能外国人向け試験では1試験13,200円と案内されています。

つまり企業側は、

5年目になってから「2号試験を受けてください」

では遅い。

2年目、3年目から、

技能。

日本語。

現場経験。

リーダー経験。

生産管理。

後輩指導。

を計画的に積ませる必要があります。


10人を「入れ替える会社」と「育てる会社」を比較する

ここからGRITMANの試算モデルです。

これは市場平均でも、実績削減額でもありません。

外国人10人が特定技能1号の上限に近づいている製造会社

を想定します。

比較するのは、

A:10人が退職・帰国等し、新しい1号人材10人を採用する

B:現在の10人が要件を満たし、特定技能2号へ移行する

という2モデルです。


A:10人を新しい1号人材へ入れ替える

仮定します。

紹介料:1人40万円

入社・住宅・初期教育:1人12万円

登録支援費:1人月25,000円

新入社員の現場教育:1人20時間

社内時間単価:3,000円

次の5年間で計算すると、

紹介料

40万円 × 10人

= 400万円

初期準備・教育

12万円 × 10人

= 120万円

1号支援費

25,000円 × 10人 × 60か月

= 1,500万円

現場OJT

20時間 × 3,000円 × 10人

= 60万円

合計、

2,080万円

となります。

給与、社会保険、住居の通常家賃、行政手数料等は含めていません。


B:10人を特定技能2号へ育成する

次に、現在の社員10人を2号へ育成するモデルです。

仮定は、

2号試験対策・教育:1人12万円

2号評価試験:15,000円

関連試験:13,200円

申請・社内管理費:1人8万円

リーダー教育・OJT:1人30時間

さらに2号では1号の法定支援義務はなくなりますが、会社独自に生活・定着・家族支援等へ1人月1万円を継続投資すると仮定します。

試験対策

12万円 × 10人

= 120万円

2号評価試験

15,000円 × 10人

= 15万円

関連試験

13,200円 × 10人

= 13.2万円

申請・管理

8万円 × 10人

= 80万円

リーダー育成

30時間 × 3,000円 × 10人

= 90万円

会社独自の定着支援

1万円 × 10人 × 60か月

= 600万円

合計、

918.2万円

です。

Aモデル2,080万円との差は、

約1,162万円

となります。


ただし「2号にした方が1,162万円得」とは言えない

ここが重要です。

この比較には、

給与差を入れていません。

特定技能2号は「熟練した技能」を持つ人材です。

1号の新人と、2号として現場リーダーを担う人材の給与が同額である方が不自然です。

2号人材には、

技能。

生産性。

責任。

後輩指導。

リーダー業務。

に応じた給与水準を設定する必要があります。

仮に2号人材の給与を、新規1号人材より月3万円高く設定したとすれば、

3万円 × 10人 × 60か月

= 1,800万円

の給与差が生じます。

それだけ見れば、先ほどの1,162万円の採用・支援コスト差を上回ります。

だから、

2号=安い人材

という考え方は間違っています。

見るべきなのは、

その人が何円多くもらうか

ではなく、

その人が会社へ何円多く価値を生むか

です。


2号人材の本当の価値は「採用費削減」だけではない

5年間働いた社員は、

会社の設備を知っています。

製品を知っています。

品質基準を知っています。

日本人社員を知っています。

事故につながるポイントも知っています。

取引先によっては納期・品質要求まで理解しています。

この人材が2号へ移行し、

新人外国人3人を指導できるようになればどうでしょうか。

それまで日本人班長が行っていた教育の一部を担える可能性があります。

例えば、日本人管理者が外国人教育に月20時間使っていたところを、2号リーダーによって月8時間減らせたと仮定します。

8時間 × 3,500円 × 12か月

= 年間33.6万円

5年間なら、

168万円

です。

2号人材5人が、それぞれ同様の役割を果たせば、理論上は840万円相当の管理工数になります。

もちろん実際にその時間が利益へ転換できるかは会社次第です。

しかし、

外国人を長く雇う経済価値は「紹介料が不要になる」だけではない

ことが分かります。


特定技能2号では1号の法定支援義務がなくなる

コスト面ではもう一つ大きな違いがあります。

1号特定技能外国人には支援計画に基づく義務的支援があります。

一方、2号は受入れ機関または登録支援機関による1号と同じ法定支援の対象外です。

だからといって、

「2号になった瞬間、会社は何もしなくていい」

という意味ではありません。

むしろ家族を呼ぶ社員が増えれば、

住宅。

学校。

行政手続。

生活相談。

長期キャリア。

といった新しい課題が出てきます。

法定支援費を削って、

企業独自の福利厚生・キャリア支援へ再投資する

という発想が必要です。


家族帯同できることも「定着コスト」に影響する

特定技能2号では、要件を満たせば配偶者や子が「家族滞在」で日本へ来ることが可能です。

企業から見ると、

「家族対応が増えて大変」

とも考えられます。

しかし逆に、

本人が家族と日本で長期生活できる環境は、

定着の重要な条件

にもなり得ます。

外国人材を、

5年間の一時的人材

として見る会社と、

10年、15年働く中核社員

として見る会社では、

住宅。

教育。

給与。

昇進。

日本語。

福利厚生。

すべての設計が変わります。


削るべきコストと、削ってはいけないコスト

削れるのは、

毎回新人を採用する紹介費。

ゼロからの入社教育。

同じ会社説明。

同じ生活説明。

新人ごとの管理事務。

1号支援の重複作業。

です。

反対に削ってはいけないのは、

2号試験教育。

技能向上。

安全教育。

リーダー教育。

日本語。

給与。

キャリア形成。

です。

COST REVOLUTIONは、

人材への投資を削る企画ではありません。

「毎回リセットされる費用」を削り、

「会社に残る能力」へ投資する。

これが本質です。


自社 × AI × 外部専門家で2号育成を仕組み化する

2号移行も、担当者の記憶だけで管理してはいけません。

自社

本人の技能評価。

リーダー経験。

後輩指導。

給与・役割設計。

キャリア面談。

AI・システム

実務経験期間管理。

試験受験予定。

資格管理。

学習進捗。

更新期限。

教育記録。

外部専門家

2号要件確認。

試験情報。

在留資格申請。

制度変更への対応。

この三層に分けます。

そして外国人が入社した時点から、

「5年後どうする?」

を決めるのではなく、

1年目:現場習熟
2年目:多能工化
3年目:2号要件確認
4年目:試験・リーダー育成
5年目:2号移行

というキャリアロードマップを作る。

これなら2号移行は「手続」ではなく、

人材育成戦略

になります。


結論。「5年で入れ替える会社」から「10年育てる会社」へ

今回のモデルでは、

10人を新しい特定技能1号へ入れ替える採用・支援関連コストを、

2,080万円。

10人を2号へ育成し、独自支援も続けるモデルを、

918.2万円。

差額を約1,162万円と試算しました。

しかし、この数字だけで2号を判断してはいけません。

2号人材には、技能と責任に見合った賃金を支払う必要があります。

だから企業が考えるべきなのは、

「安いか、高いか」ではない。

この外国人社員へあと5年間投資したら、
会社にどれだけ価値が残るのか。

です。

毎回新人を採用する会社。

外国人を班長まで育てる会社。

10年後、この2社の組織力は大きく違っているはずです。

外国人雇用のコスト革命とは、

1人を安く採ることではありません。

一度採用した人材のLTVを最大化すること。

外国人を、

「5年間の労働力」から、

会社の未来を支える熟練人材へ。

これがGRITMANの考える、

外国人雇用 COST REVOLUTION

です。


参考資料

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