外国人社員への多言語安全教育を詳しく解説|教材選びから理解確認・再教育まで
Gritman詳しく解説シリーズ|職場改善編
安全教育の動画を見てもらい、受講欄に署名をもらった。それだけで、現場の危険や合図が伝わったと判断していませんか。外国人社員への教育では、使う言語と教材を整えたうえで、実際の職場で取る行動まで確認することが大切です。
今回は教材の選定、説明、理解確認、再教育を一つの流れにします。公的資料の確認日は2026年10月22日です。以下の質問例や記録項目はGRITMANの運用提案であり、法定教育の内容・時間・講師要件や資格要件を置き換えるものではありません。
1.教材を探す前に、教える作業を決める
まず、担当する作業と、その場にある危険を教育担当者が整理します。「製造業だから製造業の動画を一本」という選び方では、実際に使用する設備や通路、禁止事項との違いが残ります。
厚生労働省の通知は、作業標準等の日本語を理解しにくいことも踏まえたリスクの洗い出しと、必要な設備等の見直しを行ったうえで、教育内容を整理する考え方を示しています。説明の工夫だけに頼らず、設備・作業方法・表示も点検します。出典:安全衛生教育の推進等について
- どこで、どの作業を担当するか
- 何が危険で、どの場所には入ってはいけないか
- 分からないとき、異常に気付いたときに誰へ連絡するか
- 作業に必要な教育や資格の確認を誰が行うか
入社前の役割分担は、前回の入社前準備と初出勤の引継ぎの記事と一緒に整理してください。
2.言語と内容の両方で教材を選ぶ
厚生労働省は「マンガでわかる働く人の安全と健康」を公開しています。自動車整備、介護、ビルクリーニング、製造業などの教材があり、案内では14言語(一部11言語)への対応が示されています。必要な業種・作業の欄で、使う言語の教材があるか個別に確認します。出典:多言語マンガ教材
本人が読みやすい言語と、口頭で説明を受けやすい言語を確認しましょう。国籍だけで使用言語を決めたり、日本語で日常会話ができることだけで専門用語も理解できると判断したりしないことが出発点です。
教材を選んだら、教育担当者が先に読み、自社の設備・作業と一致する箇所、補足する箇所を分けます。公的教材であっても、配布や視聴だけで個別の法定教育が完了するとは限りません。
3.短く説明し、本人の言葉や指差しで確認する
説明は一度に詰め込まず、一つの行動ごとに区切ります。外国人雇用管理指針は、母国語や視聴覚教材など、本人が内容を理解できる方法で安全衛生教育を行い、機械・原材料の危険性や取扱方法が確実に理解されるよう求めています。出典:外国人雇用管理指針・第四の三
「分かりましたか」に加えて、例えば次のように尋ねます。本人を試すためではなく、会社側の説明が伝わったかを確かめる質問です。
- 「この図で、通ってよい場所を指してください」
- 「この合図を受けたら、どうするか教えてください」
- 「分からなくなったとき、誰に確認しますか」
理解が曖昧なら、別の図や短い表現に変えて説明し直します。実演が必要な場合は、教育担当者が安全を確保した環境で行います。理解度を試す目的で、危険な作業を本人だけに行わせないでください。
4.通訳の役割と教育の責任を分ける
同じ言語を話せる先輩は心強い協力者ですが、通訳を依頼しただけで教育担当者の役割が終わるわけではありません。教育の実施責任者を決め、先輩にはどの言葉を補足してもらうかを事前に共有します。厚生労働省の通知も、実施責任者の管理の下での通訳・教育補助や、理解度を確認しながら教育を繰り返すことを望ましい対応として示しています。
AIで説明文を翻訳する場合は、禁止事項、条件、設備名の意味を業務と言語の両面から確認します。未確認の翻訳を、そのまま安全指示として配布しない運用が必要です。管理方法は翻訳文書の更新・承認の記事で解説しています。
想定例:教材の通路と自社の通路が違っていたら
架空の例です。教材で歩行者通路を学んだ社員が、自社の構内図では歩行者の経路を選べませんでした。このとき「動画を見たのに覚えていない」と扱わず、教材と現場を結ぶ説明が不足していなかったか確認します。
教育担当者は実際の構内図で経路と立入禁止箇所を説明し、本人に指差しで確認してもらいます。表示が分かりにくければ表示自体を見直します。後日の確認担当と日付も決め、疑問点が残ったまま単独で任せないようにします。
5.記録は「受講した」から「何を確認した」へ
社内記録には、実施日、作業、教材名・版・言語、教育担当者と通訳者、理解確認の方法、追加説明が必要な点、再確認の担当・予定日を残す方法があります。法令上の記録・保存が必要な教育では、それぞれの要件に従います。
作業や設備が変わったとき、同じ間違いが続いたとき、ヒヤリとする出来事があったときは、説明と職場環境を見直すきっかけにします。日本語の得意不得意を本人の能力全体と結び付けず、質問しやすい窓口を用意しましょう。
実施前後のチェックリスト
- 担当作業と危険を整理し、必要な教育・資格を確認した
- 本人が理解しやすい言語と教材を選んだ
- 教材と自社の設備・表示の違いを補足した
- 合図・禁止事項・連絡先を本人の言葉や指差しで確認した
- 未解決の点に、再説明の担当者と予定日を付けた
- 教材の版と確認結果を、必要な範囲で記録した
まずは次に教える作業を一つ選び、教材のどの場面を自社のどの場所につなげるか、教育担当者同士で確認してみてください。
出典・確認日
2026年10月22日確認。厚生労働省の外国人雇用管理指針、安全衛生教育の推進等について(2019年通知)、マンガでわかる働く人の安全と健康を参照。本文の具体的な質問・記録例は運用提案で、架空例は企業の実績を示すものではありません。

