外国人10人の紹介料400万円、SNS直採用なら171万円?採用内製化の損益分岐点を検証

GRITMAN|外国人雇用 COST REVOLUTION 2026年11月2日号

外国人材10人を採用する。紹介手数料が1人40万円なら、10人で400万円だ。ではSNS広告を使い、自社で応募を受け付ければ、その400万円は不要になるのだろうか。答えは「紹介料は発生しなくても、採用費がゼロになるわけではない」だ。広告費、応募対応、人事担当者の時間、翻訳、面接調整、システム費が積み重なる。しかも採用できる人数によって、直接募集が有利にも不利にもなる。

今回は、国内在住の外国人材を募集する製造会社をモデルに、紹介会社とSNS直採用を比較する。「外国人を安く雇う」話ではない。適法な募集方法と公平な雇用条件を維持したまま、採用経路の無駄をどこまで減らせるかを考える。

1.まず「誰を採用するか」で制度が変わる

外国人なら誰でも工場の仕事に就けるわけではない。永住者など身分・地位に基づく在留資格と、特定技能、技術・人文知識・国際業務などの就労資格では、認められる業務の範囲が異なる。たとえば技人国の在留資格を持つ人を、資格に適合しない単純な製造ライン作業へ配置することはできない。

今回の費用モデルは、国内に居住し、採用する職務について適法に就労できる人材を10人募集するものとする。特定技能1号を採用する場合は、分野固有の要件、在留関係の許可、支援計画などを別途確認する。海外から新たに呼び寄せる採用には、送出国側の手続、渡航費、現地法令などが加わるため、このモデルをそのまま使わない。

2.紹介会社経由なら、10人で400万円

比較のため、人材紹介手数料を1人40万円と仮定する。10人の採用に成功し、全員が紹介料の請求対象となれば、費用は400万円だ。この40万円は試算条件であり、業界平均、法定料金、GRITMANの一律料金を意味しない。候補者の選考、入社手続、雇用後の教育など、どちらの方法にも共通して発生する費用は今回の差額比較から除く。

紹介会社の価値は候補者の探索、募集経路の開拓、マッチング、選考支援などにある。候補者が集まりにくい職種や、社内で多言語対応できない会社なら、費用を払って利用する合理性はある。反対に、求人条件が明確で継続的な応募があり、社内で受付できる企業なら、直接募集を比較する価値がある。

3.SNS直採用、6か月の費用は171万円というモデル

自社がFacebook等で求人を告知し、自社フォームで応募を受け、社内の採用担当者が面接へつなぐと仮定する。期間は6か月。次の数字はすべて比較用の仮定で、実績値でも市場相場でもない。

費用項目 計算条件 6か月合計
SNS広告費 月12万円×6 72万円
社内の追加採用工数 月40時間×6×時間単価3,000円 72万円
求人制作・翻訳等 期間中の一時費用 18万円
AI・応募管理ツール 月1.5万円×6 9万円
合計 171万円

広告費は配信しただけで消化され、採用成功を保証しない。採用担当者の時間単価3,000円は給与そのものではなく、社内工数を経済価値で評価する仮定だ。担当者の人数を減らさなければ、72万円分の現金が直接減るわけでもない。AIツール費、広告制作費も実際の契約条件によって変わる。

10人採用できた場合の試算は、171万円÷10人=1人17.1万円。紹介会社の400万円と比較すると229万円低い。しかし、この差は採用成果が同等だった場合だけ成立する。

4.採用人数で損益分岐点が変わる

採用人数が少ないと、自社募集の固定費を回収できない。上の171万円を6か月の総額として、紹介手数料40万円/人と比較してみよう。

6か月の採用人数 紹介会社経由 SNS直採用 差額
3人 120万円 171万円 直採用が51万円高い
5人 200万円 171万円 直採用が29万円低い
10人 400万円 171万円 直採用が229万円低い

171万円÷40万円=4.275人。したがって、この条件なら5人目の採用で直接募集が費用面で優位になる。だが応募者の技能、就労資格、採用後の定着が同じとは限らない。採用単価だけを比較すると、仕事に適合しない人材を急いで雇う判断になりかねない。

5.本当に追うべき数字は応募数より「適格応募数」

広告の反応が多くても、そのまま採用につながるわけではない。仮に6か月で問い合わせ100件、募集要件に適合する応募60件、面接30件、採用10件となったら、問い合わせから採用までの率は10%だ。これは例示であり、広告媒体の平均値ではない。

募集の改善には、応募単価よりも「適格応募1件当たり費用」「面接設定率」「内定承諾率」「入社率」「6か月後の定着率」を使う。例えば応募100件があっても、仕事内容や在留資格に適合する人が5件しかなければ、問い合わせを増やすより求人条件と広告表現を修正すべきだ。応募者が何に期待していたか、面接で何が食い違ったかを継続的に記録する。

6.SNS求人には「6つの表示項目」が必要

厚生労働省はSNS等の労働者募集広告について、募集主の氏名・名称、住所、連絡先、業務内容、就業場所、賃金を表示するよう周知している。「高収入!外国人歓迎!DMください」だけの求人広告では、応募者に十分な情報が届かず、法令上の問題も生じ得る。虚偽や誤解を招く表示も禁止される。短い画像広告を使う場合も、求職者が必要事項を容易に確認できるよう、表示内容と遷移先の求人情報を一体で設計したい。厚労省の公式案内を参照。

採用後に「手当を含めて30万円のつもりだった」「勤務地が違った」というトラブルを防ぐため、基本給、手当、所定労働時間、残業の見込み、休日、勤務地を具体的に説明する。外国人向けには理解できる言語で補足することが重要である。

7.RPOを外注するときは「広告代行」と「職業紹介」を区別

募集の一部を外部へ委託する採用代行、いわゆるRPOを使う会社もある。ただし「RPO」という名称だけで、許認可が不要だと判断してはいけない。厚生労働省は、求人・求職の申込みを受けて雇用関係の成立をあっせんする行為を職業紹介と定義している。求人情報の提供だけなら職業紹介に当たらない場合がある一方、外部事業者が求人企業の判断によらず候補者を選定したり、採用選考の返信を行ったりすれば、実態により職業紹介に該当し得る。AIが自動処理していても結論は変わらない。厚労省「募集情報等提供と職業紹介の区分」を確認したい。

さらに、企業が自社の労働者以外の者へ募集そのものを委託する場合、委託募集として別の許可・届出の検討が必要になることがある。外部委託を始める前に、広告掲載、応募受付、候補者選定、面接日程調整、採否連絡の各工程を誰が担当するか明文化し、必要に応じて管轄労働局に確認するべきだ。「紹介料を節約するために無許可の仲介へ切り替える」という設計は避ける。

8.在留資格と届出を広告費より優先して確認

外国人から直接応募があった場合にも、受入企業が在留資格と就労可能な業務を確認する責任は残る。在留カード等の記載事項、在留期間、資格外活動許可の有無などを確認し、必要に応じて出入国在留管理庁の読取アプリ等も活用する。

厚生労働省の外国人雇用状況の届出は、原則として雇入れ・離職の際に事業主が行う義務だ。適切な求人広告を作っても、就労資格や雇用管理の要件を満たさなければ採用を進められない。特定技能の場合、直接募集で紹介料を使わなかったとしても、支援計画や義務的支援が不要になるわけではない。

9.AIは人材を「自動採用」するためではなく、事務を減らすため

AIを使えば、求人票の多言語化の下書き、応募メールの分類、面接日程の候補提示、応募者への説明文の雛形作成、採用経路別の費用集計などを効率化できる。しかし、AIの翻訳は誤ることがある。賃金や勤務条件の説明は必ず日本語原文と照合し、必要なら通訳者を介して確認する。

また、応募者の履歴書、在留カード、健康情報などを、利用条件を確認していない外部AIへ無断で入力してはならない。保存先、アクセス権限、保存期間を定める。自動スコアだけで応募者を排除するのではなく、職務に関連する評価基準を整え、採用担当者が最終判断する。

2026年10月29日にはハローワークインターネットサービスが、ヘルプデスクをかたる不審メールへの注意を公表した。直接募集でも、応募者を偽アカウントや偽の応募ページへ誘導しないために、求人広告の募集主と公式応募窓口を明確にし、担当者の連絡先を統一することが大切だ。公式のお知らせを確認したい。

10.削れるコストと削ってはいけないコスト

削減を検討できるのは、同じ候補者への重複した紹介手数料、求人原稿の作り直し、情報の二重入力、広告の無駄打ち、面接日程の連絡往復、外注していた単純な集計作業などだ。

削ってはいけないのは、適正な給与、安全教育、必要な在留手続、法令上の支援、労働条件の正確な説明、本人の個人情報保護、外国人本人の理解を確認する作業である。応募が少ないからといって在留資格の条件を無視したり、虚偽の求人表現で応募数を増やしたりしてはならない。

11.自社・AI・外注の最適配分を決める

自社が担当するのは、採用基準、求人条件、応募者との信頼関係、面接、採否判断、就労資格の確認、入社後の教育だ。AIに任せるのは、原稿案、言語別FAQの下書き、応募データの整理、面接調整、費用分析などの補助作業。外部の専門家・許可事業者には、必要な職業紹介、在留関係の専門業務、特定技能支援、現地制度の確認、特殊な言語対応を任せる。

6か月の試験運用をするなら、最初の1か月は求人条件を確定し、2か月目から広告配信と応募管理を始め、毎週、適格応募数と面接率を確認する。3か月目に媒体別の数字を見直し、6か月目に実際の採用費と入社後の状況を比較して継続を判断する。採用人数が少ない会社では、紹介会社と自社募集の併用が合理的な場合もある。

12.採用のコスト革命は「紹介料をなくすこと」ではない

今回の条件では、紹介会社で10人採用する費用は400万円、SNS直採用は171万円というモデルになった。差額は229万円だ。しかし、3人しか採用できなければ直接募集の方が51万円高くなる。固定費、採用人数、候補者の適格性を一緒に見なければ判断できない。

大切なのは採用数を競うことではない。必要な技能を持ち、法令に適合し、本人が納得した条件で入社する人を確保することだ。「紹介・自社・AI・外注」を固定観念で選ばず、採用成果と総費用で配分する。これがGRITMANの考える外国人雇用 COST REVOLUTIONである。

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※金額と採用人数はいずれも説明用の仮定です。自社で比較する際は、実際の広告費・工数・採用人数に置き換えてください。

参考一次資料(2026年11月2日確認)

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