外国人社員の定着改善を詳しく解説|施策を続ける・変える・やめるための効果検証

結論:定着率だけでなく、困りごとの解決と運用負担を確かめる

外国人社員の定着改善は、施策を始めた時点では完了しません。「予定どおり実施したか」「本人の困りごとは変わったか」「会社が無理なく続けられるか」を分けて点検します。退職者が出なかったことだけを成功の根拠にせず、相談後の対応や本人への説明まで追うことが、小さな会社でも使える検証方法です。

本稿はGRITMANが提案する社内改善の進め方です。法定の義務、必要な支援、労務上の対応を、効果が見えないという理由で省略するための方法ではありません。「やめる」の対象は、任意に追加した集計や運用方法などに限って検討します。

1.施策の目的を、測れる問いに戻す

例えば「定着を良くするために面談を増やした」だけでは、何が変われば有効なのかが曖昧です。「相談後に連絡がなく、解決したか分からない」という課題なら、「本人へ対応状況を説明できたか」が近い問いになります。

厚生労働省の雇用管理改善の好事例集では、相談体制や仕事内容の明確化など、複数の改善テーマが扱われています[出典1]。ただし、過去の高度外国人材に関する調査・事例から、自社の全社員に同じ施策が効くとは言えません。自社で起きている問題と、本人の希望から目的を決めることが必要です。

評価の問いは一つか二つに絞ります。面談の実施数、満足度、残業、研修時間などを一度に増やすと、記録することが目的になりやすいためです。「説明待ちの相談を減らす」のように、担当者が行動できる範囲を選びましょう。

2.実施・変化・負担を別の欄に書く

最初の欄は実施状況です。予定した案内を配ったか、面談を行ったか、対応担当者を決めたかを確認します。施策が届いていない人がいるなら、その状態で効果がないとは判断できません。

次の欄は本人や業務の変化です。同じ質問を繰り返す必要が減った、相談先を説明できるようになった、未解決の内容が明確になったなど、目的に近い事実を記録します。会社の推測と本人の発言は混ぜず、回答が得られていない場合は「未確認」とします。

三つ目は負担です。担当者の記録時間、説明の重複、社員が回答しにくい設問などを確認します。手間が増えたから直ちにやめるのではなく、必要な対応と不要な二重入力を分けます。現場の負担を知らずに項目だけ増やすと、記録の空欄が増え、判断材料の質も落ちます。

3.少人数の前後比較で気を付けること

対象が数人なら、一人の入退社で割合が大きく変わります。「改善率が上がった」とだけ示さず、対象人数と確認できた人数を並べてください。異動や繁忙期、上司の変更、仕事内容の変更も記録すると、施策以外に影響した可能性を考えられます。

同じ人を同じ質問で確認しても、前後の変化だけで因果関係が証明されるわけではありません。また、退職した人や未回答の人が集計から消えると、残った人だけの好評価に見えることがあります。回答者だけの結果であることを明記し、確認できない部分を無理に埋めないようにします。

国籍ごとの順位づけより、仕事や勤務帯、情報が届く経路の違いを見ます。少人数の表で所属や母語を細かく区切ると個人が分かることもあるため、共有する範囲と必要な細かさを考えてください。改善会議に、相談の私的な内容を丸ごと載せる必要はありません。

4.想定例:相談後の連絡方法を見直した会社

以下は架空の製造会社を想定した例です。外国人社員六人のうち、相談した四人から「返事がいつ来るか分からない」という声がありました。会社は、受付時に次の連絡日を伝える運用を試します。人数や結果は説明のための設定で、実績ではありません。

確認期間後、四人中三人には予定した連絡ができ、一人は担当者の不在で遅れました。連絡ができた三人のうち二人は進捗を理解し、一人は説明内容が分からないと答えました。この結果から「四件対応済み」とまとめると、遅延と理解の課題が消えてしまいます。

判断は、次の連絡日を伝える仕組みは続け、担当者不在時の代行を決め、分からなかった説明を言い換える、という形になります。この段階で「定着率が改善した」とは言えません。相談への返答と理解確認という、目的に近い行動がどこまでできたかを報告します。

5.続ける・変える・やめるの条件

続けるのは、必要な相手へ届き、目的に近い変化が確認でき、負担も管理できる施策です。次の確認時期を決め、漫然と続けないようにします。短期間で結果が出にくい施策は、途中の行動を見ながら検証期間を取り直せます。

変えるのは、方向性は妥当でも一部の人に届かない、説明が理解されない、担当者に負荷が集中する場合です。変更箇所を絞ると、その後に何が変わったかを追いやすくなります。

やめる候補は、同じ内容を重複して集めるアンケート、誰も判断に使わない表などです。ただし、保存や実施の義務、契約上の約束があるかは先に確認します。問題が深刻な場合は、次の月次会議まで待たず、責任者や適切な相談先へつなぎます。

今週できる行動

現在行っている改善を一つ選び、目的、実施状況、本人の反応、負担、次の判断日を一枚に書きます。担当者だけで結論を出さず、影響を受ける社員にも確認してください。「まだ効果は不明だが、この点は直せる」という判断も有効です。次回確認する項目を決めれば、検証が前へ進みます。

FAQ

Q.退職者がゼロなら成功ですか。
A.それだけでは判断できません。期間や人数が限られ、施策以外の要因もあります。困りごとへの対応と合わせて確認します。

Q.満足度のアンケートは必要ですか。
A.目的に合う場合は使えますが、回答しやすさに左右されます。理由や具体的な困りごとも聞き、点数だけで評価しない方法が実務的です。

Q.成果が分からない面談はやめられますか。
A.まず実施義務や支援上の位置付けを確認します。そのうえで、任意の追加面談の頻度や記録方法など、変更できる範囲を検討してください。

GRITMANへのご相談

定着の課題は、会社ごとに仕事や生活環境が違います。GRITMANへのご相談では、いまの記録から何を確認でき、何が分からないかを整理するところから始められます。三重・四日市の企業も全国の企業も、実行中の取り組みを一つ挙げて、お問い合わせ窓口からご相談ください。

関連記事

外国人社員の定着データを改善につなぐ方法

出典・確認日

[出典1]厚生労働省「高度外国人材にとって魅力ある就労環境を整備するために 雇用管理改善に役立つ好事例集」
https://www.mhlw.go.jp/content/000541599.pdf
発行:2018年3月。更新日記載なし。確認日:2026年11月2日。全国向け参考資料。現行の助成金・地域限定制度の説明ではない。古い調査数値を最新の市場状況として使用していない。効果検証手順は独自提案。

連載のご案内

本連載は今回で完結。次の連載案は「現場の教え方をそろえる」全3回。初回は教育担当者の引継ぎ表。

フォローする